「嫁いだ婦人が夫に愛されない場合、寝所の敷物の下の塵を取り、夫の食べ物にこっそりつけると敬愛されるようになる妙薬。必死なのはわかるが、塵を食わされる夫はたまらない。「自分の髪と爪を取って焼いて灰にして、意中の人の飲食物の中に入れれば、一日逢わないでも三か月逢わないように感じる」これも食わされるほうはたまらない。が。これらは実は可愛いほうで、“相愛方”の恐ろしいところは、相愛になる処方に続き、“相憎術”(人を憎みあわせる術)も載っている点だ。『医心方』は言う。「馬のたてがみと犬の毛を取って、夫婦の床の中に置けば、互いに憎みあうようになる」愛する人が自分を愛してくれるよう願い、あの手この手の策を講じ、それでも万策尽きた末、「自分を愛して」という切なる思いは、「あの女さえ憎まれれば」「ふたりが憎みあってくれれば」という、第三者を巻きこむどろどろの憎悪に変わる。そうした憎悪の芽はおそらく、愛をまじないに頼った時点で萌すのだ。愛は宿命。相思相愛になる方法などはないと思ってあきらめたほうが、少なくとも美容には良いに違いない。
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